



ワタナベイビー(Vo,G)と小宮山雄飛(Vo,Key)の2人組。1996年にシングル「スマイル」でデビュー。メンバー2人が作詞、作曲・ボーカルを担当し、ポップな音楽性で人気を集める。2002年11月活動休止後、2006年9月に日比谷野外音楽堂の復活ライブで活動を再開。2007年6月にアルバム『遠距離恋愛は続いた!!』を発表。2011年11月2日にはデビュー15周年を記念しライブCD『15年の日曜日』をリリースする。
http://hoff.jp/
「こういうジョニー・デップこそ見るべきです!」
————まずは『ランゴ』をご覧になって、いかがでしたか?
小宮山:僕はジョニー・デップの作品はほとんど全部観ているんですが、世の中のジョニー・デップファンたちはこういう映画こそ観るべきだと思いましたよ。ジョニー・デップが、本当に自分のやりたいことをやっている感じがしたんです。いまや彼は超売れっ子の役者ですけど、もともとは「自分が好きなことをちゃんとやる」っていうのが魅力な人ですよね?このランゴという役こそが、ジョニー・デップの真髄だと感じましたね。ファンなら、このジョニーこそ見るべきです!
ワタナベイビー:僕は小宮山君とまるで逆の立場と言うか、『ランゴ』というタイトル以外の情報を知らずに作品を観たんですよ。ジョニー・デップが主人公の声を演じていることを知らなかったのはもちろんですが、まずジョニー・デップ自体を知らなくて(笑)、最初に知ったのは「ジョニデ」っていう略称だったくらいなんですが(笑)、すごく楽しめましたね。
————(笑)。昔からのジョニー・デップファンも、最近知ったばかりの人も、どっちも楽しめるという映画ということですね。
ワタナベイビー:そうですね。アニメ映画って、誰に対しても開かれているものだと思うんですよ。僕のように作品についての知識のない人や小さな子どもが見ても「面白かった!いいストーリーだ」って思えるのが、成功している良い作品なんだと思います。
小宮山:アート好きやクリエイターの方も楽しめると思いますよ。でも、そういう方々は何も言わなくてもきっと観ると思うんですよね。僕も、随分前に、まずランゴのルックスだけを見た瞬間に「この映画は絶対に面白い!」って思ったんですよ。カメレオンのフォルムとか質感が、子どもが怖がるかもしれないくらいにリアルで、良い意味で可愛さが無かったのが良かったんですね。そういう迎合しないでトガったところが、とてもアーティスティックな作品だと思います。
「CGなのに実写映画のようなザラザラした質感が面白い!」
————監督は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのゴア・ヴァービンスキーです。『ランゴ』は長年温めていた企画で、本作をやりたくてパイレーツ~の最新作を断ったほどだそうです。さらに制作スタジオはジョージ・ルーカスが設立したILMが担当していますが、いかがでしたか?
小宮山:CGなのに、砂漠の「渇いている」感じがすごく良く出ていますよね。『ランゴ』が面白いのは、まるで実写映画のようなザラザラした感触というか、リアリティがあるところなんです。
ワタナベイビー:やっぱりそう考えると、実写映画には限界があるんですよ。だって銃撃戦を撮るにしたって、撮影中に本当に人を殺したりするわけにはいかないですし。
小宮山:そんなの当たり前でしょ(笑)。
ワタナベイビー:『ランゴ』みたいな映像っていうのは一番ドキドキできますね。「いったい、どのくらいまでリアルに見せてくれるんだろう?」って思えるので。
小宮山:キャラクターの造型やデザインも印象的でしたよね。
ワタナベイビー:毛むくじゃらのキャラクターが出てくるんですけど、僕はそいつの表情が好きでしたね。それからランゴの敵役で「ガラガラヘビのジェイク」っていうのが出てきますね。あれはもう、精神面も含めて「本物のワル」だなあと感心しました(笑)。精神的にランゴを痛ぶっていくあたりとか、憎たらしいけど「さすがワル」と認めざるを得ない(笑)。
「ランゴは、ステージに立っているときのオレだ!」
————ランゴはヒーローに憧れるペットのカメレオンという設定です。お2人もそんなランゴに共感できるところはありますか?
ワタナベイビー:ランゴの姿を見ていると、我々自身も虚勢を張り、普段とは違うキャラクターになってステージに立っているんだな、と改めて思いました。ライブのときって、「オレは何でもできる」というような気持ちにならないとダメなんです。だからライブのときは、ちょうど酒場の場面のランゴと同じような精神状態ですよね。
小宮山:たしかに、酒を飲んで「おれは7人殺しのランゴだ!」って大ウソをついてるランゴ、ちょっとワタナベ君みたいに見えたな(笑)。
ワタナベイビー:でも、そういう虚勢を張っている状態も、また「自分」なんですよね。だから僕も日々「ランゴ体験」をしていると言えますね(笑)。虚勢を張って、それを張り倒せる存在こそがヒーローであり、私、ワタナベイビーであると(笑)。
小宮山:そういう結論ですか(笑)。あと、ランゴがだんだん「ヒーロー顔」に変化していくのをちゃんと表現できていたのは、すごいなと思いましたね。ランゴの顔つきが変わっていく様子をしっかり表現していた。あれは感心しました。まさに“アニメーション”じゃなく“映画”でしたね。
「可愛いだけじゃなく、毒々しさも含んだ最高のPOPムービー!」
————お2人はこの『ランゴ』をどんな人にお勧めしたいですか?
ワタナベイビー:ランゴって、エリートヒーローではないですよね。僕もそうですけど(笑)。全然真っ当な奴ではない。だから、いま青春期にあるような、屈折した、何もやる気が起きないような若者にも観てほしいと思います。観ると、その彼もランゴの影響を受けて「変身」してくれると思うんですよね。たとえば、「高校デビューしちゃおうかな」みたいな勇気が湧いてくるかもしれないし。だから若い人たちには、「『ランゴ』を観て自信を付けろ、そして周りを見返してやれ!」というメッセージを送りたいですね。「君は本当は無気力じゃないんだ」と。
小宮山:僕はジョニー・デップファンはもちろんですが、クリエイターとか、ものづくりをしている人に観てほしいですね。いや、でもそういう人は絶対観ると思いますよ。そういう人たちって、例えばすごくルックスの良いアイドルと、たとえばミック・ジャガーがいた時に、僕らもそうですけどミック・ジャガーを取ると思うんですよ。同じように他の作品より『ランゴ』を取ると思うんですよね。
ワタナベイビー:たとえば花にしてもね、綺麗なばかりじゃなくて、何かしらインパクトがあって、グッと惹きつけられるような撮り方をするほうが魅力的に見えたりしますよね。アラーキーの写真みたいな。
小宮山:いま、きっとアラーキーを例に出すんだろうなと思った(笑)。でも、そういう「ナマっぽさ」が『ランゴ』にあるっていうのは、すごいことなんですよ。最先端の技術を使っているのに、「普通にかわいい」だけの映画をつくらなかったっていう。酒場のシーンなんて、言ってみれば赤羽みたいな雰囲気ですもんね(笑)。独特の「やさぐれ感」が漂ってるんですよ(笑)。
ワタナベイビー:かといって、実写にできるだけ近づけてスーパーリアルにしようとしてるわけでもない。そうしたいならホンモノのカメレオンを使って撮ればいいんだからね。というわけで、そろそろ私が結論を言いましょう。『ランゴ』はリアルな生々しさと、アニメーションとしての親しみやすさ、両方のいいところをバランス良くミックスさせた、本当の意味で「POP」な映画なんです!
小宮山:そうなんですよ!僕もそう言いたかったんです!僕は常々、「POP」ってそういうものだと思ってるんです。可愛いだけじゃなくて、毒々しさも含んだものだと。その意味で『ランゴ』は、どんな人でも楽しめることも含めて、最高のPOPムービーだと思いますね。うわー、でも最後、ワタナベ君にいいところ持ってかれた~(笑)。


